財団法人対日貿易投資交流促進協会
対日ビジネス交流支援部次長 木村 誠

ドイツの鉄鋼コンツェルンであるティッセン・グループ傘下にローテ・エルデという会社がある。大型旋回ベアリングの製造で世界トップのメーカーであるが、その100%出資の日本ロバロ㈱(本社:東京港区)が、最近、新工場を北九州市若松区の響灘臨海工業団地に建設することを表明した。2008年10月から風力発電用ベアリングを生産開始予定で、総投資額は45億円にのぼる。環境・エネルギー分野は、2008年の北海道・洞爺湖サミットの中心議題のひとつでもあるが、同社は、九州工場での生産開始によって、欧米、中国、インド等での需要増に対応していくと言われている。日本ロバロ㈱の北九州市への工場進出は、充実した物流インフラ、アジアへの近接性や優秀な人材を確保しやすいなど、北九州市の立地の優位性が評価されたものといえよう。
北九州市には現在こうした外資系企業が20社近く立地している。市は外国企業誘致地域支援事業を活用し「自動車関連、IT、環境」の3分野を重点的に誘致活動に取り組んできた。このうち「自動車」、「IT」については隣接の福岡市の誘致重点分野と同じであるが、北九州市では「環境関連」が入ってくる。これは、北九州市が、鉄鋼業をはじめとする重厚長大型産業からスタートしているという歴史的な背景によると見られる。この点でサービス業のウェートが相対的に高い福岡市と比較して、北九州市は誘致対象においても既存の産業を補完するという視点で、製造業(ものづくり)志向が強い。
自動車や車載半導体の産業集積は、北部九州(福岡県および大分県)という広域でみても突出しており、これら地域にはトヨタや日産を始めとする完成車メーカーの7工場、デンソーなどの各種部品メーカーが数多く立地している。北部九州の自動車生産台数は、2006年度にすでに年間100万台を超えており、福岡県では2008年度150万台の達成を目指している。
北九州市は福岡県の北東部に位置しており、1963 年2 月に門司、小倉、若松、八幡、戸畑の5 市が合併して誕生した九州初の百万人の人口を擁する政令指定都市である。北九州市の立地優位性のひとつは、そのロケーションである。北九州市を中心に半径1000キロメートルの円を描くと、西は上海、東は東京、北はウラジオストックがほぼその線上に浮上してくる。北九州市は、いわば、成長する東アジア・ロシア市場へのゲートウェイである。


北九州市では外資系企業誘致は、産業経済局の貿易振興課が所管している。このほか国内外企業の立地にあたっての補助金や交付金等の助成、各種融資は産業経済局の誘致課が、また港湾物流関連企業の誘致は港湾空港局が行っている。貿易振興課は外資系企業誘致のみならず地元企業の国際ビジネス支援を担当しており、JR小倉駅北口のAIMビル内にオフィスと相談窓口を構え、ジェトロ北九州事務所、(社)北九州貿易協会とともに北九州貿易・投資ワンストップ・サービスセンター(KTI)を一体的に運営している。現在、KTIには外国企業向けに7室のインキュベーション・オフィスがある。ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)と比較して利用が有料(月額 18,000円~25,200円、但し外国公的機関は無料)ではあるものの、最長で24ヶ月まで入居できる。

2008年度の北九州市予算では「戦略的な企業誘致の推進」のため、約112億円の予算が査定されている。そのほとんどが工場等の新設・増設に対する助成金・資金融資・産業用地整備費であるが、同時に、成果指標として、2007~2010年度の4年間に80件(うち自動車関連20件)の内外企業誘致と4千人の新規雇用創出が目標設定されている。 外資系企業誘致については、北九州市貿易振興課、東京事務所(北九州市シティプロモーション首都圏本部)、海外駐在員事務所(大連、上海)が中心となり、県の海外事務所や関係団体等と連携して誘致活動をおこなっている。また、経済産業省・ジェトロの外国企業誘致地域支援事業や、地域間交流支援事業(RIT:今年度はベトナム・ハノイ市とのIT産業交流)も活用しながら、多面的に誘致活動をおこなっている。
他方、産学連携や人材育成にも積極的である。北九州市若松区ひびきの地区にある「北九州学術研究都市」では、先端科学技術開発の頭脳となる大学や研究機関等が集積し、産業界との連携によって、産業の高度化及び新産業の創出を目指している。カー・エレクトロ二クスセンターをはじめとして次代の産業を担うハイテク人材の育成も行われており、北九州市立大学、九州工業大学大学院、福岡大学大学院、早稲田大学大学院、英国クランフィールド大学など先端科学技術に関する教育・研究機関が、ハイレベルな教育研究施設の共同利用など連携を深めながら教育・研究をおこなっている。
北九州市 貿易振興課(外資系企業誘致担当)
電話:093-551-3605 FAX:093-551-3615
http://www.kk-j.org/
北九州貿易・投資ワンストップサービスセンター
http://www.kti-center.jp/
(注)写真・画像は北九州市提供
(2008年7月25日)