対日投資について

台湾企業の対日投資成功事例と地方への投資促進に対する提言

地方への投資の現状分析と台湾からの投資を呼び込むために

対日投資に対するいくつかの誤解の一つに、対日投資誘致活動は主に首都圏経済のみを活性化するのではないかということがある(*9)。確かにこれまで調査してきた台湾を中心とした東アジア系企業のニーズは、東京、大阪等、大都市圏に一極集中している。ただその理由として回答されたのは、「顧客がそこにいる」という明確な目的以外は、彼らの日本への投資の選択肢が、最初から「東京」「大阪」に限られており、それ以外の選択肢を考慮に入れない場合が多い。それは何故か。地方への投資誘致について、そのメリットもデメリットも含め、「情報が全くない」という現状があるためだ。

しかし、何らかのきっかけで台湾企業と地方中小企業との取引関係が密になり、台湾企業側がその土地および人に愛着を感じると次第と交流回数が増え、その地域と継続的に繋がりを持ちたいという感情が生まれることも多い。
その中で取引先地場企業から合弁事業等を持ちかけられる、また自社の事業買収を持ちかけられると、その地域・企業に資本投下の検討を行う場合がある。もちろん利益がでない事業への資本投下は原則行わないであろうが、困難な再生案件であっても、持ち前の経営管理の巧みさでコストダウンを図る等で、上手くその企業の収益モデルを作り上げるケースも多くある。こうして台湾企業の対日投資により、地方自治体が当該企業から税収を確保し雇用を維持できれば、地域経済活性化に一定の効果が生まれる可能性は極めて高い。

例えば、NEC山形工場を買収したASE(日月光半導体)は、赤字事業であった NECの半導体後工程工場買収後、工場設備・雇用を維持したまま、台湾企業の巧みなマネジメント力で、一年後には黒字化するという快挙をなし、地方行政から感謝の念を持って受け入れられていると聞く。

以下、台湾からの投資を呼び込むために、日本の自治体が取りうる戦略を列挙する。

1.台湾企業に対する地方自治体の投資誘致環境の継続的PR

地方企業誘致は継続的に行うことにより、台湾企業への訴求効果が飛躍的に増す。そのため、単発で投資セミナーを行うよりも、2~3年のスパンで継続的に当該セミナーを行い、台湾企業に訴求していくことが重要である。

2.点と面の台湾企業誘致戦略

地方中小企業と台湾企業とのアライアンスにより対日投資を促進させる手法は非常に有効であるが、一方で経営者同士の属人的な要素が強くなり、プロセス・結果が見えにくく、面としての投資連鎖になり難いのが難点である。もちろん点の戦略は重要であるが、一方で面の戦略も必要となる。
例えば、台湾経済部資策会(台湾デジタルコンテンツ院)のソフトウェアパーク入居企業や工業技術研究院(台湾産総研)などの公的インキュベーション入居企業と、日本の地場中小企業集積や専門クラスター等とのビジネスマッチングを主体とした、クラスター間交流を行うことが必要である(*10)。

3.長期的視野に立った企業誘致・対日投資戦略

台湾企業はその他の外資系企業に比較すると長期的関係が築きやすく、短期投資よりもむしろ地方自治体や地方中小企業と連携しながら、日本での有益なビジネスモデルを構築することに長けている。台湾企業誘致には通常3~5年の投資誘致計画が必要であり、自治体側もこれを念頭に置いた誘致スキームを策定することで、台湾企業投資誘致が有効に行えよう。

事業継承型M&Aが地方中小企業を救う

昨今の外資系ファンドによる M&A事例の増加により、外資系企業投資やOut-InのM&Aというと、「日本の技術流出の恐れがある」「二束三文で買い叩かれて、切り売りされる」というネガティブなイメージが先行している。しかし、台湾企業からすると、対日投資は取引先の日本企業との関係を損ねるリスクの方が高く、「受け入れ態勢ができていない場所には出たくない」のが本音である。戦後日本企業のOEMで経済成長を遂げてきた歴史的経緯のためか、「旗を振って日本に凱旋し、企業や土地を買い占める」というイメージに大きな抵抗感を持つ台湾企業が多い。よって、台湾企業の対日投資案件はその件数の割に表に出ることが少なく、対日M&Aの場合、実際には日本企業側からの依頼ベースで行われることが多いようだ。例えば、TSMCの日鉄ファウンドリーの買収等、他の外資系企業の買収ケースには見られない、黒字化に時間のかかる企業買収も多く、また一見再生が困難な収益モデルであっても、買収後はかなり辛抱強く改革を行い、事業を黒字化するという類稀なM&A事例も多く持ち合わせているのが、台湾企業の対日投資事例の特徴でもある。

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