mipro(ミプロ)一般財団法人対日貿易投資交流促進協会

文字サイズ

小口輸入について

輸送手段:小口輸入の流れ

小口輸入では商品の仕入れ量が少ないことから、一般的な貨物のほかに国際郵便、国際宅配便なども輸送手段として利用されています。それぞれの特性を理解し、自分に合った方法を見つけましょう。

1) 国際郵便

物品を輸送する郵便物には、(1)最優先に運送される「EMS」、(2)一般的な物品を運送する「国際小包」、(3)小形包装物、書籍等の印刷物を運送する「通常郵便物」の3種類があり、(1)は航空便、(2)と(3)は航空便、SAL便、船便があります。所要日数は状況により変動しますが、おおむねEMSで2~4日、航空便が3~6日、SAL便が6~13日、船便は1~3か月とされています。

重量、大きさの制限は国・地域により異なり、EMSと国際小包の場合、重量は20kg~30kg、長さ1~1.5m、長さ+胴回り2~3m程度までとなります。また万国郵便条約、郵便法等により送ることができない禁制品があるほか、IATAが定める航空危険物については船便でも送ることができません。

EMSは速達、書留扱いで保険も付けられており、国際小包は希望により速達扱いと保険の付保が可能、また通常郵便物も希望により速達扱いと書留扱いにすることができます。EMSと国際小包は郵便物番号が付されているので、日本到着後であれば運送状況を追跡することができ、届かない場合も差出人を通じて調査の依頼が可能です。通常郵便物を追跡したい場合は書留にする必要があります。紛失、損傷等の場合、EMS、国際小包および書留とした通常郵便物は、各国の定める範囲で実損額が差出人へ賠償されます。

2) 国際宅配便

国際宅配便は国際輸送会社が自社の保有する航空機、トラック等のインフラを使用し、発送地から配達地までの輸送・通関を一貫して引き受けるDoor to Doorの輸送サービスです。所要日数は通常3日程度ですが、配達時間期限付きのプラン、配達日数延長による割安料金設定、料金受取人払いなど、顧客のニーズに合わせたさまざまなサービスを行っています。

重量、大きさの制限は業者により異なり、重量はおおむね70kg、長さ2.7~3m、長さ+胴回り3.3~4.2m程度までとされています。しかしこの制限を超える場合でも、規定外貨物として手数料を加算して引受ける業者、航空貨物として個別の見積もりを提示する業者などがあり、航空貨物を取扱うフレイトフォワーダーとの差がなくなりつつあります。

品目の制限には注意が必要で、IATAの危険物規則書等により航空輸送ができない品目、配達先の国・地域で輸入が禁止されている品目のほか、動植物(部分品を含む)、ワシントン条約にかかる品目等、輸入時に法規制がかかる品目も引受けない場合が多く、食品衛生法にかかる品目については引受ける業者もありますが、オプション料金がかかります。

個々の荷物には引受時にトラッキングナンバーが付されるので、業者のウェブサイトで容易に荷物の追跡を行うことができます。荷物の減失、破損等は賠償されますが、請求権は送料の支払人にありますので、受取人払いの場合を除き、権利者は発送人となります。

3) 航空・海上貨物

1梱包の大きさが国際郵便や国際宅配便の制限を超えるもの、商品の特性上、貨物でなければ運べないもの等は、航空貨物または海上貨物で輸送します。冷蔵・冷凍品など温度管理を必要とするものは、リーファーコンテナと呼ばれる温度調節可能なコンテナを使用します。また荷物量がコンテナ1個に満たない場合は複数の荷主の荷物を同じコンテナに積み込む混載貨物を利用しますが、臭い移りしやすいもの、温度管理が必要となるもの、検疫が必要なもの等は単独スペースが必要となる場合があります。

国際運賃は重量をもとに計算されますが、容積が大きいものは容積重量を算出し、実重量と比べて重い方が使われます。また重量が重いほど運賃は割安になる場合が多く、軽い荷物は一定の重量まで最低運賃(ミニマムチャージ)が適用されます。

貨物は国際郵便、国際宅配便と異なり、出荷地での集荷から到着地への配送までの行程にさまざまな業者が介在しており、国際輸送のほかに、輸出国・輸入国での国内輸送、ターミナルで行われるコンテナの搬出入や荷さばき、通関手続き、倉庫保管などのため、国際運賃以外にも多くの経費が発生します。貨物を利用する場合は一般的にフレイトフォワーダーと呼ばれる国際物流業者に輸送・通関業務をまとめて託すこととなりますが、費用や明細は業者により大きく異なるため複数社から見積もりを取り比較するとよいでしょう。国際物流業者は通関業者を兼ねていることも多いため、通関業者検索システム(日本通関業連合会)等でも探すことができます。

国際物流にかかる費用の例
  • 輸出国
    荷物ピックアップ料、国内輸送費、輸出梱包費、ターミナル利用料、輸出通関手数料 等
  • 国際輸送
    基本運賃、保険料、燃料割増、重量割増、為替調整割増、セキュリティー割増、繁忙期割増 等
  • 輸入地
    ターミナル利用料、梱包荷さばき料、各種検査費用、輸入通関手数料、関税、消費税、国内輸送費 等

貨物を利用する際はある程度の貿易実務知識と英語などのコミュニケーション力が必要となります。
取引先との交渉においても、貨物を利用する場合は出荷地から輸出港までの輸送、輸出通関手続き、国際輸送、輸入港での輸入通関手続き、配送地までの輸送、保険の付保等について、どちらが手配と費用負担を行うか、取り決めが必要です。そのため売買交渉において売手が価格を提示する際には、商品以外にどのような費用が含まれているかを表すインコタームズがしばしば使われます。インコタームズは売手と買手の国の商習慣の違いから解釈の差によるトラブルが生じることを防ぐため、国際商業会議所により定められた国際貿易取引規則で、3文字のアルファベットで表されます。規則ごとに売主、買主の役割(運送、保険、通関手続きの手配)と費用負担およびリスク移転の分岐点(貨物の被害を売主負担から買主負担に移行する時点)についての基本的な解釈を示しています。商習慣の変化に合わせてこれまで数回改訂され、最新は2020年1月1日発効のインコタームズ2020となっています。小口輸入の交渉では以下のような規則(取引条件)が提示されることがあります。

インコタームズ2020より
  • 【EWX(工場渡)】
    売主が提示する価格は、商品代、梱包費のみ。(輸送に関する費用は含まれていない。)
    貨物の損害は、工場、倉庫等からの出荷時に貨物が運送人に引渡された時点から買主の負担となる。
  • 【FCA(運送人渡)】
    売主が提示する価格は、商品代、梱包費、輸出地内の指定地(*1)までの輸送費、輸出通関の費用が含まれている。
    貨物の損害は、輸出地内の指定地で貨物が運送人に引渡された時点から買主の負担となる。
  • 【CPT(運送費込み)】
    売主が提示する価格は、商品代、梱包費、輸出地内の輸送費、輸出通関の費用、輸入地までの国際輸送費が含まれている。
    貨物の損害は、輸出地内の指定地(*1)で商品が運送人に引渡された時点から買主の負担となる。
  • 【CIP(運送費保険料込み)】
    売主が提示する価格は、商品代、梱包費、輸出地内の輸送費、輸出通関の費用、輸入地までの国際輸送費、保険の費用が含まれている。
    貨物の損害は、輸出地内の指定地(*1)で商品が運送人に引渡された時点から買主の負担となる。
  • 【DPU(荷卸込持込渡し)】
    売主が提示する価格には商品代、梱包費、輸出地内の輸送費、輸出通関の費用、輸入地までの国際輸送費、輸入地内の指定地(*2)までの輸送費、保険の費用が含まれている。
    貨物の損害は、輸入地内の指定地に商品が搬入された時点から買主の負担となる。

(*1)輸出地内の指定地:
港・空港のコンテナ詰め所や航空会社代理店、運送会社等の貨物引渡し拠点等。
(*2)輸入地内の指定地:
港・空港のコンテナ荷さばき所、倉庫、道路上の拠点、鉄道の駅等。

<関連するミプロ資料>

小口輸入向け 最適な輸送手段の選び方

(更新日:2022年9月1日)

ページの先頭に戻る