mipro(ミプロ)一般財団法人対日貿易投資交流促進協会

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小口輸入について

輸送手段:小口輸入の流れ

小口輸入では商品の仕入れ量が少ないことから、一般的な貨物のほかに国際郵便、国際宅配便なども輸送手段として利用されています。それぞれの特性を理解し、自分に合った方法を見つけましょう。

1) 国際郵便

国際郵便のうち、物品を輸送する際に利用できるのは、(1)最優先に運送される「EMS」、(2)一般的な物品を運送する「国際小包」、(3)小形包装物、書籍等印刷物を運送する「通常郵便物」の3種類です。(1)は航空便、(2)と(3)は航空便、SAL便、船便があります。所要日数は状況により変動しますが、おおむねEMSで2~4日、航空便が5~8日、SAL便が2~3週間、船便は1~3か月とされています。
万国郵便条約、郵便法等により送ることができない禁制品があり、IATAが定める航空危険物については船便でも送ることができないため、事前に確認しましょう。

重量、大きさの制限は国・地域により異なります。目安は以下の通りです。
 EMS:重量はおおむね30kgまで、長さ1.5m以内、長さ+胴回りが3m以内。
 国際小包:重量が20kgまたは30kgまで、長さ1~1.5m、長さ+胴回りが2~3m程度まで。
 通常郵便物:重量は小形包装物が2kgまで、印刷物は5kgまで。長さは箱形の場合60cmまで、巻物の場合90cmまで。

付加サービスは、日本から発送する場合であれば、EMSは書留扱いで保険付き、国際小包は保険の付保が可能、また通常郵便物は書留扱いが可能ですが、海外から発送する場合はこれらのサービスを使えない国もあります。
EMSと国際小包は郵便物番号が付されているので、日本到着後であれば運送状況を追跡することができ、届かない場合も調査の依頼が可能です。(EMSの場合は、発送国の郵便局サイトで追跡可能な場合もあります。)通常郵便物を追跡したい場合は書留にする必要があります。紛失、損傷等の場合、EMS、国際小包および書留とした通常郵便物は、各国の定める範囲で、差出人に対し実損額の賠償が行われます。

重量、大きさ、付加サービスに関する国・地域ごとの詳細は、日本郵便のウェブサイトにある「国際郵便条件表(国・地域別情報)」で確認することができます。

2) 国際宅配便

国際宅配便は国際輸送会社が自社の保有する航空機、トラック等のインフラを使用し、発送地から配達地までの輸送・通関を一貫して引き受けるDoor to Doorの輸送サービスです。所要日数は通常3日程度ですが、配達時間期限付きのプラン、配達日数延長による割安料金プラン、料金受取人払いなど、顧客のニーズに合わせたさまざまなサービスメニューがあります。

重量、大きさの制限は業者により異なり、重量はおおむね70kg、長さ1.2~2.7m、最大長辺+胴回りが2.8~4m程度までとされています。しかしこの制限を超える場合でも、規定外貨物として手数料を加算して引受ける業者、航空貨物として個別の見積もりを提示する業者などがあり、航空貨物を取扱うフレイトフォワーダーとの差がなくなりつつあります。

品目の制限には注意が必要で、IATAの危険物規則書等により航空輸送ができない品目、配達先の国・地域で輸入が禁止されている品目のほか、動植物(部分品を含む)、ワシントン条約にかかる品目等、輸入時に法規制がかかる品目も引受けない場合が多く、食品衛生法にかかる品目については引受ける業者もありますが、オプション料金がかかります。

個々の荷物には引受時にトラッキングナンバーが付されるので、業者のウェブサイトで容易に荷物の追跡を行うことができます。荷物の減失、破損等は賠償されますが、請求権は送料の支払人にありますので、元払いの場合の権利者は、発送人となります。

3) 航空・海上貨物

1梱包の大きさが国際郵便や国際宅配便の制限を超えるもの、商品の特性上、貨物でなければ運べないもの等は、航空貨物または海上貨物で輸送します。冷蔵・冷凍品など温度管理を必要とするものは、リーファーコンテナと呼ばれる温度調節可能なコンテナを使用します。また荷物量がコンテナ1個に満たない場合は複数の荷主の荷物を同じコンテナに積み込む混載貨物を利用しますが、臭い移りしやすいもの、温度管理が必要となるもの、検疫が必要なもの等は単独スペースが必要となる場合があります。

国際運賃は重量をもとに計算されますが、容積が大きいものは容積重量(*)を算出し、実重量と比べて重い方が使われます。また重量が重いほど1kg(または1t)あたりの運賃は割安になる場合が多く、軽い荷物は一定の重量まで最低運賃(ミニマムチャージ)が適用されます。
*容積重量:航空貨物では6,000㎤=1kg、海上貨物では1㎥=1tとして換算する。

貨物は国際郵便、国際宅配便と異なり、出荷地から到着地までの間、輸出国・輸入国での国内輸送、ターミナルで行われるコンテナの搬出入や荷さばき、通関手続き、倉庫保管などの各過程にさまざまな業者が介在しており、船会社や航空会社に支払う国際運賃以外にも多くの費用がかかります。貨物を利用する場合は一般的にフレイトフォワーダーと呼ばれる国際物流業者に輸送・通関業務をまとめて託すこととなりますが、費用や明細は業者により大きく異なるため、複数社から見積もりを取って比較することをお勧めします。国際物流業者は通関業者を兼ねていることも多いため、通関業者検索システム(日本通関業連合会)等で探すことができます。

貨物の国際輸送にかかる費用の例
  • 輸出地
    荷物ピックアップ料、国内輸送費、輸出梱包費、ターミナル利用料、輸出通関手数料 等
  • 国際輸送
    基本運賃、保険料、燃料割増、重量割増、為替調整割増、セキュリティー割増、繁忙期割増 等
  • 輸入地
    ターミナル利用料、梱包荷さばき料、各種検査費用、輸入通関手数料、関税、消費税、国内輸送費 等

貨物を利用する際は、ある程度の貿易実務知識と英語などのコミュニケーション力が必要となります。貨物輸送には上記の通り、輸出地、国際輸送、輸入地それぞれにおける輸送・通関手続きと手数料のほか、保険の付保も必要となるため、それらを売手と買手のどちらが手配し、費用を負担するのかを、取り決めておかなければなりません。そこで売手は取引交渉において販売価格を提示する際、商品価格以外にどのような費用が含まれているかを表すインコタームズをしばしば使います。
インコタームズとは、国際取引において共通する商法がないため、売手と買手の国の商習慣の違いにより取引内容の解釈に差が生じないよう、国際商業会議所が定めた規則です。国際取引でよく使われる取引条件(規則)を3文字のアルファベットで表しており、規則ごとに売主、買主の役割(運送、保険、通関手続きの手配)と費用負担、およびリスク移転の分岐点(輸送中の貨物が損害を被った場合、売主と買主のどちらがそれを負担するかを分ける時点)について、基本的な解釈を示しています。商習慣の変化に合わせてこれまで数回改訂され、最新は2020年1月1日発効のインコタームズ2020となっています。11種類の規則のうち、小口輸入の交渉では以下のような規則が提示されることがあります。なお、航空貨物の交渉においてFOBやCIFなどの規則が示される場合がありますが、インコタームズ2020ではFOBをFCAに、CIFをCIPに変えることが推奨されていますので、ご注意ください。

インコタームズ2020より

【EXW(工場渡)】
提示される販売価格に含まれるもの
商品代金、梱包費のみ。(輸送と保険に関する手配と費用負担は、買主が全て行う。)
貨物の損害負担
工場、倉庫等からの搬出作業時から全て、買主の負担となる。

【FCA(運送人渡)】
提示される販売価格に含まれるもの
商品代金、梱包費、輸出地内の指定地(*1)までの輸送費、輸出通関の費用。
(指定地から国際輸送を含む輸入地の納品先までの輸送費と輸入通関、およびその間の保険は、買主が手配し、費用も負担する。)
貨物の損害負担
輸出地内の指定地(*1)で貨物を引き渡す時点(荷卸し前の状態)までの損害は、売主が負担。その後は買主が負担する。

【CPT(運送費込み)】
提示される販売価格に含まれるもの
商品代金、梱包費、輸出地内の輸送費、輸出通関の費用、輸入地までの国際輸送費。(輸入通関、輸入地内の輸送の手配と、国際輸送から輸入地の納品先までの保険は買主が手配し、費用も負担する。)
貨物の損害負担
輸出地内の指定地(*1)で商品が運送人に引渡されるまでの損害は、売主が負担。その後は国際輸送中も含め買主の負担となる。(この規則では、国際輸送の手配と費用負担は売主が行うが、その間に生じた損害は買主が負担するため、買主は国際輸送の保険を手配し、費用も負担することとなる。)

【CIP(運送費保険料込み)】
提示される販売価格に含まれるもの
商品代金、梱包費、輸出地内の輸送費、輸出通関の費用、輸入地までの国際輸送費、およびその間の保険の費用。(輸入通関、輸入地内の輸送とその間の保険は、買主が手配し、費用も負担する。)
貨物の損害負担
輸出地内の指定地(*1)で商品が運送人に引渡されるまでの損害は、売主が負担。その後は国際輸送中も含め買主の負担となる。(この規則では、売主が国際輸送の手配・費用負担とともに、その間の保険も手配し保険料を支払うが、運送人に引渡された後の貨物に被害が生じた場合、保険会社との交渉は買主が行う。)

【DPU(荷卸込持込渡し)】
提示される販売価格に含まれるもの
商品代金、梱包費、輸出地内の輸送費、輸出通関の費用、輸入地までの国際輸送費、輸入地内の指定地(*2)での荷卸しまでの輸送費、およびその間の保険の費用。(輸入通関の費用は、買主が負担する。)
貨物の損害負担
輸入地内の指定地(*2)に商品が搬入される時点までの貨物の損害を、売主が負担する。

(*1)輸出地内の指定地:
港・空港のコンテナ詰め所や航空会社代理店、運送会社等の貨物引渡し拠点等。
(*2)輸入地内の指定地:
港・空港のコンテナ荷さばき所、倉庫、道路上の拠点、鉄道の駅、買主の拠点等。

国際取引においては上記以外の重要事項(たとえば、支払代金とその決済方法、物品の所有権の移転、契約違反が生じた場合の対処など)についても、取り決めが必要です。
従って、これらの事項を含めた売買契約書や、書面による交渉記録を作成しておくことをお勧めします。

<関連するミプロ資料>

「小口輸入向け 最適な輸送手段の選び方」

(資料画像の下の [OPEN+] を押すと、すべての資料が表示されます。)

(更新日:2024年8月19日)

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