小口輸入ビジネスでは仕入れ量が少ないことから、輸送手段は貨物だけではなく、帰国する際の手荷物、国際郵便、国際宅配便なども使われます。輸入通関手続きは輸送方法ごとに少しずつ異なるため、事前に流れを把握し、適した準備を行う必要があります。
課税価格の合計が30万円程度以下で、輸入貿易管理令の規定による承認(*1)を受ける必要がないものは、旅具通関という簡易な通関を行うことができます。この条件にあてはまらない場合は、一般の貨物と同様の輸入通関手続きが必要となるため、保税倉庫業者に依頼して荷物を保税地域へ搬入し、輸入(納税)申告手続きを行います。
他法令で規制されている商品(*2)の場合は税関の手続きの前に当該法令を所管する官庁の許可証等を取得しておく必要があり、帰国時にそれらの書類が準備できない場合は商品を保税地域に搬入し、許可証等をそろえてから輸入通関手続きを行うこととなります。
関税・消費税の計算の基準となる課税対象価格には、貨物の運賃表をもとに決められている運賃が加算されます。業務用の商品には個人の土産物などに適用される免税枠は適用されません。別送品も一般の貨物として扱われます。従って通関の前に業務用の商品と個人用の商品を分け、インボイスも整理しておく必要があります。
旅具通関の輸入(納税)申告手続きは、「携帯品・別送品申告書(税関様式C-5360)」(*3) 1通にインボイス、輸入手続きに必要な許可証等(他法令に係る場合)を添えて税関に提出する方法と、Webサイト「Visit Japan Web」による電子申告(*4)を利用する方法があります。電子申告の場合は事前にアカウントの作成、利用者登録等を行っておく必要があります。
申告に基づき税関による審査・検査が行われ、算出された関税・消費税等を納付すると、荷物を引取ることができます。ただしこの場合、税関からは納付金のレシートしか発行されません。
業務上の記録として輸入許可通知書を必要とする場合は、上記の申告書とともに「輸出・輸入託送品(携帯品・別送品)申告書(税関様式C-5340)」(*5) 2通を税関に提出します。税関の輸入許可が下りると、「輸出・輸入託送品(携帯品・別送品)申告書(税関様式C-5340)」のうち1通が輸入許可通知書として交付されます。
一般の輸入通関手続きを行う場合は、荷物を一旦保税地域に入れ、保税倉庫業者から搬入票を受取り、輸入(納税)申告を行います。申告は税関に設置されているNACCSの窓口電子申告端末(*6)を利用して行い、同時に搬入票、インボイス、輸入手続きに必要な許可証等(他法令に係る場合)も提出します。端末を使用せず手書きの輸入(納税)申告書を提出する場合は、「輸入(納税)申告書(税関様式C-5020)」(*7) 3通(1品目の課税価格が200,999円以下の場合は2通)に搬入票、インボイス、許可証等を添えて税関に提出します。税関の審査・検査後、関税・消費税等を納付し輸入許可が下りると申告書の1通が輸入許可通知書として交付され、それを保税地域で提示することにより、荷物を引取ることができます。
外国から送られてきた信書(手紙・書簡)以外の郵便物は、添付されている税関告知書、インボイス等に記載された内容をもとに、日本郵便(株)国際交換局内に設置されている税関外郵出張所が課税価格を算出し、課税価格が20万円以下のものと、20万円を超えるものに分けます。同一差出人から同一名宛人に、同一時期に分割して送られた郵便物は、当該分割されたすべての郵便物の課税価格を合計した額が課税価格となります。他法令の手続きを必要とするもの(*)については、小包の外側、インボイス等にその旨を大きく記載しておくよう発送人に依頼しましょう。輸入時に税関で個人輸入品と間違われ、輸入者に到着通知が送られず、必要な手続きを経ずに通関してしまった場合は、その製品を販売することができなくなりますので、注意が必要です。
課税価格が20万円以下の郵便物は、輸入者の輸入申告による「申告納税方式」ではなく、税関が関税額を決定する「賦課課税方式」により関税・消費税等が計算されます。一連の手続きは税関外郵出張所が行うので、基本的に輸入者が税関に出向く必要はありません。税関の審査・検査の後、税金がかからない郵便物はそのまま日本郵便に戻され、配達されます。税金がかかる郵便物は課税通知書と納付書を添付して日本郵便に戻され、税金が1万円以下及び、1万円超~30万円以下で輸入者が配達を希望するものは、輸入者が配達員に税金の納付を委託し(現金を渡す)、日本郵便の通関料(課税される郵便物1個に付き200円)を支払うことにより荷物を受取ることができます。その他の郵便物については輸入者に課税通知書が配達されます。輸入者は配達局に出向き、税金と通関料を納付して荷物を受取ることとなります。
内容品の価格が不明なもの、税率が決められないもの、法令により許可・承認等が必要なもの、減免税の対象となる郵便物等は、国際交換局に一旦保管され、輸入者に「外国から到着した郵便物の税関手続のお知らせ(到着通知)」が送られます。輸入者が通関手続きに必要とされる資料を税関外郵出張所に提出(または郵送)した後、あらためて審査が行われることとなります。
課税価格が20万円を超える郵便物は、輸入者による輸入(納税)申告手続きが必要となるため、国際交換局から「輸入(納税)申告を必要とする可能性がある国際郵便物のお知らせ(到着通知)」が送られます。輸入者は、その通知を発送した国際交換局に出向いて輸入(納税)申告を行わなければなりませんが、同封されている委任状を提出することにより、日本郵便に手続きを委任することができます。(手数料:品目数により、6,600円~12,000円)また、それ以外の任意の通関業者に委任することもできます。
手続きを委任した場合は、日本郵便もしくは通関業者に税金と手数料を支払うことにより、荷物が配達されます。
輸入者自身が輸入(納税)申告を行う場合は、受け取った到着通知のほか、身分証明書、インボイス(仕入書等)、他法令に基づく許可証等(必要な場合)、会社の委任状等(会社宛の場合)を持参して、郵便物が保管されている国際交換局で搬入確認書を取得した後、税関外郵出張所で輸入(納税)申告を行います。スムーズに手続きを進めるため、国際交換局と税関外郵出張所に必要書類や手順を確認しておくとよいでしょう。
税関の審査・検査の後、税金を納付すると荷物を受取ることができます。(配達も可能。)
国際宅配便は、料金に通関手数料も含まれており、基本的に輸入者が税関に出向いて通関手続きを行う必要はありません。宅配業者は個々の荷物に付けられたAWB(Air Waybill:航空貨物運送状)のデータをもとに、荷物の到着前に税関に輸入予備申告を行うため、荷物は到着後保税倉庫に運び込まれると同時に輸入許可が取得できる状態となります。関税・消費税等の税金も宅配業者が立替え払いを済ませて配達するため、輸入者は荷物配達時に税金および立替え手数料等を支払えば、荷物を受取ることができます。
ただし、食品衛生法等の他法令に係る手続きが必要となる場合は、このような流れにはなりません。輸入者は荷物が海外から発送される前に、取引先がどの宅配業者を利用するのかを確認し、その業者の日本のカスタマーサービスに、自分が輸入する品目に関する他法令手続きが可能か否かを問合せる必要があります。対応は業者によって異なり、手続きが可能である場合、一般的には事前の契約や登録、オプション料金等が必要となります。
発送された荷物は、予備申告は行われず、日本到着後宅配業者から輸入者に連絡が入り、輸入者が揃えた必要書類をもとに他法令の主管省庁での手続きを済ませた後、税関で輸入申告と納税を行い、配達されることとなります。
貨物の通関手続きは、通関業者に依頼するのが一般的です。航空貨物の場合には輸入者自身が行うことも可能ですが、海上貨物では、港湾での実務を熟知していない人が行うことは大変難しいでしょう。通関業者を探す場合は、日本通関業連合会の通関業者検索システムなどを利用して、複数の業者から見積もりを取ります。業者の中には食品、家具など、特定の品目を専門に扱うところもありますので、ニーズに合わせて選択するとよいでしょう。
貨物は、日本に到着する数日前に船会社・航空会社(またはその代理店)から荷受人(輸入者)に到着案内(Arrival Notice)が送られます。日本に到着後、船舶や航空機から降ろされ、保税地域内で荷解き作業、B/L(船荷証券)/AWB(航空貨物運送状)との照合等が行われた後、NACCS(船舶・航空機と輸出入貨物のオンライン処理システム)に登録されると、通関手続きが行えるようになります。
保税倉庫の利用には保管料がかかりますが、5日程度のフリータイムが設定されているので、この間に通関手続きを済ませて搬出すれば保管料はかかりません。従って、到着案内を受け取ったらできるだけ速やかに通関手続きの準備を始めましょう。
手順は、まず到着案内とB/L(またはAWB)を船・航空会社(またはその代理店)に持参し、運賃等の必要経費の精算後、運送関係書類を受け取ります。次に必要に応じて輸入関連法規に基づく手続きを済ませてから、税関で輸入(納税)申告手続きを行います。最後に関税・消費税等の税金を納付して輸入許可書を取得し、保税倉庫から貨物を搬出します。
通関業者に依頼する場合は、到着案内を受け取ったらすぐに通関業者に輸入関係書類を渡し、手続き終了後、税金と通関手数料を支払うと荷物が配送されます。
輸入関係書類には主に以下のようなものがあります。貨物到着後すぐに手続きを行えるよう、事前に準備しておきましょう。
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(更新日:2024年8月19日)