mipro(ミプロ)一般財団法人対日貿易投資交流促進協会

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対日投資コラム

外国人のための起業情報(2) ~在留資格「投資・経営」が「経営・管理」になり、何が変わったか?~

ミプロ対日投資アドバイザー・行政書士 高橋 秀次

対日直接投資の増加は日本政府が掲げた成長戦略の重要なテーマです。外国人の起業を促進するため、「入国管理及び難民認定法」の一部が改正され、平成27年4月1日に施行されました。その中で、外国人が事業を運営する際に取得する在留資格の名称が「投資・経営」から「経営・管理」に変わりました。それに伴い、内容も以下のように変更されました。

1.活動類型の変更

投資・経営

(1) 本邦において事業の経営を開始し、その経営又は管理に従事する活動
(2) 本邦の事業に投資してその経営又は管理に従事する活動
(3) 本邦において事業の経営を開始した外国人(外国法人を含む。)に代わって当該事業の経営又は管理に従事する活動
(4) 本邦の事業に投資した外国人(外国法人を含む。)に代わって当該事業の経営又は管理に従事する活動

経営・管理

(1) 本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動

解 説

旧「投資・経営」は、外国人(外国法人を含む。)による投資が条件になっていましたが、改正後の「経営・管理」では、外国人による投資は必須の条件ではなくなりました。従って、日本人の投資による事業の経営又は管理に従事する活動も、在留資格「経営・管理」の対象になりました。

法文上は、在留資格の許可申請をする経営者たる外国人は、投資金額が0円でも良いことになります。しかし、実質的な経営者として経営の意思決定ができる状況であることが、客観的に認められる必要があります。従って、現実的には、資本金の過半数以上の資金を準備することになると思われます。もし、出資額が0円の場合は、経営者として経営活動が十分可能であることを提出資料で明らかにする必要があると考えます。

2.在留期間4月の新設

投資・経営

在留期間は、「5年、3年、1年、3月」

経営・管理

在留期間は、「5年、3年、1年、 4月、3月」

解 説

これは会社設立に必要な印鑑登録に配慮した措置です。在留カード制度が施行され、外国人登録制度から住民登録制度に変わりました。以前は、短期滞在で来日し、外国人登録と印鑑登録を行い、会社設立手続を行うことが可能でした。しかし、在留カード制度施行後は、短期滞在者は住民登録の対象ではないため、印鑑登録ができなくなってしまいました。そこで、会社設立が完了していなくてもその他の条件が整っていれば、4か月の在留期間が許可され、その4か月間に住民登録と印鑑登録を行い、会社設立を完了することで、在留期間更新許可申請を行うことが可能な制度に改正されました。

今回の入管法の改正では、「会社の代表者のうち少なくとも1人は日本国内に住所を有することが必要である」、という法人登記の実務上の要請で、4か月の在留期間が新設されました。しかし一方で、法務局の法人登記の取り扱いも変更になり、平成27年3月16日以降は、法人代表者の全員が日本国外に居住していても、法人設立登記が可能になりました。従って、法人代表者のうち少なくとも1人が日本国内に住所を有する必要はなくなりました。

ただし、法人代表者の全員が日本国外に居住している場合、会社設立手続きをどのように進めていくのかということは検討を要します。

3.事業規模の明確化

投資・経営

「総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第3次答申」に関する在留資格認定」という法務省の文書に事業規模500万円以上と記載。

経営・管理

「資本金又は出資額の総額が500万円以上であること。」と、法務省令に明記。

解 説

元々は法務省令に、旧「投資・経営」の在留資格が許可される事業規模について、「2人以上の本邦に居住する者で常勤の職員が従事して営まれる規模のものであること。」と明記されていて、1人で起業する場合は在留資格が許可されませんでした。

しかし、日本政府の総合規制改革会議で、「昨今の起業の実情に合わないのではないか」といった意見が出て、「総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第3次答申」に関する在留資格認定」という法務省の文書で、2人以上の雇用を行わない場合であっても、それと同等の事業規模であると認定できる場合として、「500万円以上の投資」が明記されました。それ以降、入国管理局では、500万円以上の投資規模であれば、2人以上の雇用がなくても「相当の投資規模」であると認定されるようになりました。

このような実務運用を踏まえ、今回、「500万円」という具体的な金額が法務省令に明記されたものと思われます。

4.法人設立前の在留資格許可

投資・経営

法人を設立して事業を開始しようとする場合には、法人の設立が完了していることが在留資格許可の条件。

経営・管理

法人を設立して事業を開始しようとする場合で、法人の設立が完了していなくても、定款等で法人を設立しようとしていることが明らかであれば在留資格が許可され得る。

解 説

旧「投資・経営」では、法人の登記事項証明書が在留資格許可申請の際の提出書類として必要でしたが、改正後の「経営・管理」では、その書類の提出は必須ではなくなりました。そのため、法人の設立が完了していなくても、定款等で法人を設立しようとしていることが明らかであれば、許可され得ることになりました。

5.まとめ

これらの改正のうちで影響が大きいのは、「1.活動類型の変更」ではないでしょうか。

改正前は、一人で500万円以上の投資が必要でしたが、改正後は、外国人又は日本人の投資の合計が500万円以上と変更されました。在留資格の許可申請をする外国人が実質的に経営権を取得できるだけの投資をしていれば良いということです。

なお、在留資格の許可を得ようとしている外国人の投資金額が0円の場合や、「実質的に経営権を取得」していると認められるための具体的な条件などは、今後の実務の運用を注視していく必要があると考えます。

以 上
2016年9月

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