mipro(ミプロ)一般財団法人対日貿易投資交流促進協会

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対日投資コラム

日本にある世界の機関を知る(1)-台北駐日経済文化代表処

ミプロ対日投資アドバイザー 根橋 玲子

世界の地域との国際アライアンスと地域振興に焦点を当て、日本企業と世界の企業とのビジネス交流を促進するため、日本における各国、地域の行政や業界団体等の取り組みをご紹介します。

組織概要

1972年9月の中国との国交正常化の実現に伴い日本と台湾との間の外交条約は終了したが、日台間の歴史的関係や、貿易経済関係を鑑みて、同年12月に、日本側に外務省および通商産業省(現経済産業省)所管の「財団法人交流協会(現公益財団法人日本台湾交流協会)」、台湾側に「亜東関係協会(現台湾日本関係協会)」が設立され、これら民間団体を通じて文化交流をはじめとして、貿易、経済、技術交流などを行っている(図1)。

図1.日台交流団体

台北駐日経済文化代表処には、ビザの受発給を扱う査証組、在日台湾人の保護や支援を行う僑務部のほか、教育部、広報部、経済部、科学技術部、行政部などがあり、台湾の外交部(外務省に相当)、経済部(経済産業省に相当)ほか、台湾の各省庁からの出向者が配置されている。

インタビュー

台北駐日経済文化代表処 経済組組長 周立(しゅう・りつ)氏

亜東関係協会経済組組長を務めた後、台北駐フィリピン経済文化代表処経済組、経済部国際貿易局を経て、亜東関係協会副秘書長に着任するなど、一貫して台湾の対外貿易投資促進業務に従事してきた。

問1:経済組では、特に地方自治体との関係においてどのような活動をしていますか?

経済組では、主に経済交流や貿易投資促進を行っている。貿易関連では、台湾の行政関連のミッション派遣や、セミナー開催、市場調査の協力なども行っている。例えば地方自治体等が台湾において市場調査を行う場合の視察やミッション派遣に際し、台湾側の行政機関や業界団体の活動の紹介等、情報提供などの協力を行っている。

また、2011年9月に「投資の自由化、促進及び保護に関する相互協力のための取決め(日台民間投資取決め)」が締結され、同年12月台湾経済部の「台日産業提携架け橋方案」が認可された。2012年に経済部は、経済部長(経済大臣に相当)が本部長を兼任する「台日産業提携推進本部」を組織し、同本部の下部組織「経済部工業局台日産業合作推動弁公室(TJPO)」を設立した。TJPOでは、経済部工業局局長がリーダー、同工業局副局長および周立・組長がサブリーダーに就任。「台日産業提携架け橋プロジェクト」を通じ、台日貿易投資交流のワンストップサービスを行っている。

問2:対日投資については?

経済組では対日投資について、(1)在日台湾企業の支援、(2)経済部投資業務処 (経済部投資誘致総合サービスセンター)や経済部工業局による双方向の投資交流推進事業、といった枠組みで対応している。
なお、(2)の経済部投資業務処は、1995年より野村総合研究所台北支店が日本から台湾への投資のコンサルティングを行う「ジャパンデスク」業務を委託している。経済部工業局は、TJPOにて、台湾企業の日本への投資に対する支援も行っている。

台湾企業の対日投資の傾向としては、台湾が強みを持つIT・半導体・液晶パネルなどの製造業において、日本の取引先サイドからの要望により資本参加や工場買収を行うケースが多い。投資業務処の調査でも、台湾企業の対日投資事例は、日本企業との取引関係があるケースが殆どであるため、対日投資を希望される場合には、まずは地元企業と台湾企業との関係構築を行うことが重要である。

台湾企業の対日投資事例については、以下の事例が参考となる。
・台湾大手銀行である中国信託商業銀行が東京スター銀行を買収(2014年)
・ソーラーパネルおよび太陽光発電モジュール製造のE-SOLAR株式会社が営業拠点設立(2012)、松山市内の太陽光パネル製造装置メーカーの工場を賃借し、同地で日本製パネルの製造開始(2014年) 
・台湾大手工作機械メーカーの友嘉集団が総合工作機械・産業機械メーカーの老舗である株式会社池貝の株式を中国上海電気から取得(2014年)
・台湾の世界最大電子機器製造受託(EMS)メーカーである鴻海精密工業が、3888億円の第三者割当増資引き受けにより、シャープの株式会社の66%の株式を取得(2016年)
・台湾で唯一の非同族・非政府系銀行である、台湾玉山銀行が、東京支店を設立(2017年10月)

問3:地方自治体の皆様へメッセージ

地方自治体の皆様には、これまで代表処が主催するセミナーや交流会など、事業協力等を頂き感謝しております。特に、2017年からは、台湾では、「5+2」イノベーション産業計画を推進しています。「5+2」とはアジアシリコンバレー(IoT産業)、バイオ医薬産業、グリーンテクノロジー産業、スマート機械産業、国防航空産業の5大イノベーション産業と、新農業(アグリバイオ)、循環経済産業(クリーンエネルギー等)を加えたものであり、台湾企業の付加価値の向上が見込めるような産業政策を推進しています。こうした「5+2」イノベーション産業分野で、連携したいと考えている産業クラスターや企業グループなどが中心にとなって、台湾のクラスターとの交流ができれば、相互の産業に関する理解が深まり、貿易や投資に繋がっていくことが期待できます。今後も特に地域で特色を持つ日本の地域産業クラスターとの交流を希望していますので、よろしくお願いします。

台北駐日経済文化代表処
経済組組長 周立(しゅう・りつ)氏

台湾の産業政策とハイテククラスター紹介:

台湾のハイテククラスターは、国際機関や海外評価機関により、世界でもトップクラスの産業クラスターと評価されている。台湾の工業技術発展のため、1980年代以降台湾の国家科学委員会(NSC)によって科学工業園区(サイエンスパーク)が設立され、先端技術人材育成や産業誘致が行われてきた。そのサイエンスパークは、IT、ナノテク、バイオなど新産業に特化しており、現在運営されている16ヵ所のうち、主要サイエンスパークとしては、新竹、台南、台中の3ヵ所が挙げられる。

「新竹科学工業園区」は1980年に設立され、1990年代にはPC産業や半導体産業が急速に成長した。また、1995年以降、液晶パネル産業や半導体産業を中心とした一大集積地が台南に形成され、「台南科学工業園区」として大規模ハイテククラスターに発展した。2002年には、既に多数の精密機械・金型の伝統的集積のあった台中地域に、新たに半導体・LCDを中心とした「台中科学工業園区」が開設された。

これらのサイエンスパークは保税地域となっており、一定の条件の下で、輸入税、貨物(物品)税、営業税は免除される(科学工業園区設置管理条例第20条)。大手日系企業を始め、欧米などの有力企業が立地しており、管理局を通じてクラスター内企業との交流も可能である。

台湾のサイエンスパークには、大学などの学術研究機関や、工業技術研究院(ITRI)などの技術連携・移転機関なども拠点を構え、サイエンスパーク内での産学官研連携が進みやすくなっている。特に、ITRIのオープンラボでは、最新の設備を揃え世界の研究者・技術者との交流と効率的な技術の市場化や製品化を目指している。こうしたサイエンスパークには、日系企業の進出も多いため、管理オフィスに日本語を話すスタッフもいる。ワンストップサービスを原則とし、工業団地では排水処理等インフラ整備も行政側で行う。

※台湾の主要サイエンスパーク
問4:担当者と連絡先

周立(しゅう・りつ)組長をリーダーとして、蔡偉淦副組長および郭主席課長が対応している。

連絡先:
台北駐日経済文化代表処経済組
住所:〒108-0071 東京都港区白金台5-20-2
電話: 03(3280)7881
FAX : 03(3280)7928
E-mail:economy@roc-taiwan.org

*台日産業提携架け橋プロジェクトについては、台日産業合作推動弁公室(TJPO)にお問い合わせください。
台日産業合作推動弁公室(台日産業合作推動オフィス・TJPO)http://www.tjpo.org.tw/jp/

以 上
2018年5月

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