mipro(ミプロ)一般財団法人対日貿易投資交流促進協会

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対日投資コラム

日本にある世界の機関を知る(4)-香港貿易発展局

ミプロ対日投資アドバイザー 根橋 玲子

世界の地域との国際アライアンスと地域振興に焦点を当て、日本企業と世界の企業とのビジネス交流を促進するため、日本における各国、地域の行政や業界団体等の取り組みをご紹介します。

組織概要

香港貿易発展局(HKTDC)は、香港にとっての新たなマーケットとビジネスチャンスの開拓を目的として、1966年に設立された準政府機関である。香港本部のほか、世界約50都市(うち中国本土13都市)に海外事務所が設置されており、中国本土やアジアをはじめとした世界各地でビジネスを行うためのプラットフォームとして、香港の利用を促進している。設立から半世紀以上にわたり、国際展示会、国際会議、ビジネスミッションなどを主催し、主に中小企業を対象として、中国本土や世界の主要マーケットでのビジネスチャンスを提供している。また、さまざまな出版物やリサーチレポート、マーケットプレイス・アプリを含むデジタルチャネルを通じて有益な情報も発信している。日本では、1971年に東京事務所、1981年に大阪事務所を開設した。

2018年11月に「Think Global Think Hong Kong(香港:国際化へのパートナー)」という過去最大の対日プロモーション事業を東京で開催した。これは同局が世界の先進経済都市(英国、米国、フランス、イタリア、カナダ、ドイツ、日本)で展開している海外における香港プロモーション事業の一環で、日本では2012年5月以来6年半ぶりの開催となった。メインシンポジウム、テーマ別分科会、香港からの来日ミッションによる商談会や関連イベント等を通じて、香港の果たす役割や香港企業との連携方法についての情報提供が行われ、日本企業への熱いメッセージが伝えられた。

アジアで事業を展開するグローバル企業の中には、香港に中国本土を含むアジア地域統括拠点を有する企業も多い。香港では、内外の銀行による人民元建て貿易決済サービスをはじめ、金融、物流、法律、財務に関連した世界水準のサービスが受けられることが背景にある。

香港はアジアで最も発着便の多いハブ空港を擁しており、世界220超の都市を結ぶフライトが毎日約1,100便に達する定期便を運航している。香港コンベンション&エキシビション・センター(展示面積約9万平方メートル)およびアジアワールドエキスポ(同7万平方メートル)という大規模なイベント会場に加え、世界トップクラスのホテルを含む宿泊施設も充実しているため、展示会や国際会議の開催にも適した場所となっている。

香港貿易発展局が開催する2019年度のイベントは、展示会が37、国際会議が8を数える。同局はこうしたイベントを通じて、香港と世界中の企業間のビジネス創出に尽力している。近年は、「バイオテクノロジー」「人工知能(AI)」「スマートシティー」「フィンテック」などのイノベーション&テクノロジー産業、クリエーティブ産業、スタートアップ企業の支援などにも力を入れ、新しいビジネスの振興に力を入れている。

インタビュー

香港貿易発展局 東京事務所長 伊東 正裕氏

伊東正裕氏は、1985年日本の大手食品会社入社後、台湾師範大学留学、英国レスター大学経営学修士(MBA)を取得。その後通算14年間にわたり中国関連の業務経験を有する。2006年7月より香港貿易発展局に転じ、マーケティング・マネージャーとして食品・農水産物、コンテンツ、デザイン各産業の貿易振興を担当、中小企業の香港・中国進出に際してのコンサルティング/アドバイザリー業務に従事。2007年5月東京事務所次長、2012年1月大阪事務所長、2018年3月より現職。NPO法人 日本香港協会 理事を兼任。

問1:香港貿易発展局では、特に日本の地方自治体との関係においてどのような活動をしていますか?

地方自治体とは、各地域企業の国際化支援において相互協力の関係にあり、複数の都道府県庁や市役所、地域の金融機関との間で業務協力覚書(MOU)締結している。

諸外国の貿易促進機関は、自国産品を海外市場向けに輸出振興することを生業としているが、香港貿易発展局では、香港と海外との双方向の貿易振興に当たっているので、香港市場向けの輸出拡大を目指す日本企業の相談も広く受け付けている。

香港は既に14年連続で日本の食品・農林水産物の輸出先として首位を維持しており、各自治体からは輸出拡大に対する高い関心が示されている。例えば、弊局が香港で毎年8月に開催する食品・食材の展示会『フード・エキスポ』の出展ブースを活用する日本企業も増えており、香港をはじめとした世界各国のバイヤーに向けた、地域企業のビジネス創出支援を行っている。開催29回目となった2018年の同エキスポには、世界23カ国・地域から1,562企業・団体の出展があり、アジア、欧州、北米、中東、豪州・太平洋諸島、中南米、アフリカを含め全世界から2万1,668人の来場者を集めた。また、日本からは海外勢で最多となる301企業・団体が出展し、販売促進のためのPR活動を展開した。

近年では、2018年7月の書籍の展示会『香港ブックフェア』や2019年3月の映像コンテンツ展示会『香港フィルマート』などに日本の自治体やフィルムコミッション、日本政府観光局(JNTO)など観光誘致団体が出展し、各地元へのインバウンド旅行客を増やそうとする動きが活発化している。

香港での展示会の活用にあたって、弊局では日本各地でビジネスセミナーや商談会を開催し、香港経由での海外市場の開拓や管理など、香港を活用するビジネスの優位性に対する理解と周知に努めている。こうしたイベントの開催に際しては、地方自治体や商工会議所、業界団体、地方銀行などにも協力を得ている。また、地方自治体をはじめ地元のニーズをうかがいながら、主催する各種展示会への視察ツアーなども企画している。 

問2:対日投資については?

香港企業の中には、グローバルビジネスに不可欠なさまざまなプロフェッショナル・サービスを提供する企業も多い。日本企業向けにこうしたサービスを展開する企業も多く、弊局主催の展示会を通じた商談も行われている。このような形で日本企業と香港企業の間のビジネス創出を支援しているという点で、対日投資事業も業務の範疇になりえると認識している。

香港や中国本土からの訪日ミッション団も随時受け入れており、地方自治体の方々の協力を得ながら、東京以外の各地域への視察や商談会事業も行っている。日本企業への投資(M&A)に関心をもつ企業と、そうした企業に対して資金や販路拓などの支援を仰ぐ日本企業とのマッチングにも協力している。

例えば、ある企業が、海外企業との取引に関し、リスク管理や与信管理に関心がある場合、金融、法律、財務面に関し、「一国二制度」の下で資本主義体制が維持されている香港の制度インフラや専門サービスは、心強い味方になるだろう。また、香港企業とパートナーシップを結ぶことで、相手方の華人ネットワークに繋がることができ、ビジネスチャンスを広げると同時にリスクを効果的に軽減している日本企業もある。こうした点から、香港はとりわけ中国本土やASEAN諸国へのゲートウェイとしての役割が大きいと言える。また、中国ビジネスを展開する日系企業においては、香港に中国本土やその他アジアを見据えた統括オフィスを設立、香港での上場も視野に入れたホールディングカンパニーの設置など、香港を活用したビジネススキームを描くことができる。

香港企業は、中国が改革開放を本格化した1980年代から中国本土に投資していた経験から、そのネットワークや中国での事業経験で他国企業に先んじている。また香港は、英米法による法治インフラが整う地域であり、日本企業が海外展開や国際M&Aを行う際に活用するリーガル・サービスも充実している。

問3:地方自治体の皆様へメッセージ

日頃より地方自治体の皆様には香港貿易発展局が主催するセミナーやミッションについて、ご協力を賜り誠に有難うございます。地方自治体の皆様には、各地域における産業クラスターや企業集積についての状況などをうかがい、弊局が地元企業の皆様の海外ビジネスの拡大に貢献できる方法について意見交換したいと考えています。

中国とアセアンが世界経済の成長をけん引する中、こうした地域でのビジネスを検討する地元企業を支援する役割を担う自治体の皆様にとって、アジアの貿易・金融・物流センターである香港は、最適なビジネスプラットフォームです。

中国政府は2019年2月に、広東省と香港、マカオの連携を深める「広東・香港・澳門大湾区」構想の発展概要を発表しました。特に、世界から注目されているイノベーション拠点である広東省深圳市を含む同構想は今後、地域のさらなる経済発展を先導すると期待されています。最近はこうした大湾区のポテンシャルも見込んで、日本国内各地の中小・中堅企業が主役となり、「首都圏」経由でなく、地域から直接グローバルに繋がる「地域発世界進出」の第一歩として、まずは香港に飛び出していくという事例も増えています。海外のスタートアップ企業にもやさしい香港は、起業都市としても日本企業にとって魅力ある街となっています。

なお、香港貿易発展局東京・大阪両事務所では、香港の製品・サービスの調達ガイドや香港・中国本土の経済・産業調査情報を提供するほか、データバンクを利用した企業紹介やマッチングサービスも行っています。また、香港・中国本土での実務経験が豊富なアドバイザーが貿易関連、経営全般、市場開拓、法律、知財、税務会計、製造管理、労務人事、生活関連の分野で個別の相談(ビジネス・アドバイザリー・サービス:無料・予約制)に応じていますので、ぜひご活用ください。

この他、日本と香港のビジネス交流を促進する機関として、日本全国主要11都市にネットワークを持つ日本香港協会とういう組織があります。香港をはじめアジア地域でのビジネス展開を検討または実行されている皆様は、ぜひ最寄りの協会にご入会ください。

日本香港協会 (Japan Hong Kong Society )
URL:http://www.jhks.gr.jp/

問4:担当者と連絡先

香港貿易発展局 東京事務所長 伊東 正裕氏

東京事務所伊東正裕所長をリーダーとして、同所職員が対応している。

連絡先:
香港貿易発展局
URL:http://www.hktdc.com/info/ms/jp/Japanese.htm

【東京事務所】
住所:〒102-0083東京都千代田区麹町3-4
   トラスティ麹町ビル6階
電話:03-5210-5850
E-mail:tokyo.office@hktdc.org

【大阪事務所】
大阪事務所長 鄭偉星(サミュエル・チェン)
住所:〒541-0052 大阪市中央区安土町2-3-13
大阪国際ビルディング10階
電話:06-4705-7030
E-mail:osaka.office@hktdc.org

以 上
2019年6月

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