ミプロ対日投資アドバイザー 根橋 玲子
世界の国や地域との国際アライアンスと地域振興に焦点をあて、日本企業と外国企業とのビジネス交流を促進するため、日本における各国、地域の政府機関や業界団体等の取り組みをご紹介します。
欧州ビジネス協会(以下、EBC)は、1983年に設立された、16カ国からなる欧州各国の商工会議所及び駐日経済団体の貿易政策を司る機関である。1972年に欧州商工会議所の合同運営委員会として設立されたのが始まり。現在、EBCは在日欧州企業の声を代表し、日本における欧州企業の貿易、投資環境の改善と欧州企業の日本市場での円滑なビジネスの推進を目的として活動している。事務局長をトップに産業別委員会が設置され、これら委員会は事務局により運営されている。また、EBCは欧州と日本との貿易・投資政策に関して、極めて重要な役割を担う機関として、駐日欧州連合(EU)代表部*、加盟国大使館とも密接に連携し、日本政府や日本の経済団体とも良好な関係を構築している。さらに、経済団体、報道関係、政府機関への窓口としての役目も果たし、関連情報の収集や発信、会員へのサポート等も行っている。
欧州ビジネス協会(EBC)
https://ebc-jp.com/ja/
※駐日欧州連合(EU)代表部(the Delegation of the European Union to Japan)は、駐日EU大使をトップとした、日本におけるEUを代表する外交使節団である。駐日EU代表部の任務は、(1)日本におけるEUの代表として、その利益および価値を促進し、進展させること、(2)日本とEU間の政治、経済、文化、教育、科学、その他の分野における協力を発展、強化させること、(3)必要に応じ、日本との協力を通じてEUが世界中で、その利益および価値をより良く促進・進展させることである。
欧州ビジネス協会
事務局長 ヴァレリー・モスケッティ氏
チーフポリシーディレクター ビョーン・コングスタード氏
ヴァレリー・モスケッティ氏(左)
ビョーン・コングスタード氏(右)
ヴァレリー・モスケッティ事務局長:
パリ政治学院(Sciences Po Paris)にて政治学・国際関係の修士号(EU経済・法律・政策専攻)、フランス国立東洋言語文化研究学院 (INALCO)にて異文化コミュニケーション・マネジメントの修士号、ソルボンヌ大学でイタリア語・イタリア文明の修士号を取得。アフリカ(コートジボワール、南アフリカ、モロッコ)にて、現地および国際企業のビジネス展開を支援し、また、南アフリカとEU間の経済関係を強化するべく在南アフリカ欧州商工会議所を支援。来日後は日欧産業協力センターにて日欧間の産業協力を推進。2020年2月より欧州ビジネス協会(EBC)の最高執行責任者を務め、組織の戦略的方向性と運営を指揮。EU・日本経済連携協定(EPA)のフォローアップ、規制や非関税障壁への対応戦略の策定にも取り組む。
ビョーン・コングスタードチーフポリシーディレクター:
スウェーデンのヴェクショー大学にて経済学の学士号を取得。スウェーデン国立貿易委員会、ストックホルム商工会議所にて勤務。公的セクターと民間セクター双方において、これまで20年以上にわたり、通商政策の分野での経験を有す。2010年から、欧州ビジネス協会(EBC)のチーフポリシーディレクターを務め、日本でビジネスを行う欧州企業を代表して戦略的アドバイスや政策提言を行っている。こうした働きかけは、日本の政府や自治体、および、欧州の機関に対し行われており、欧州委員会に対しては、業界の視点や技術的知見を提供し、貿易交渉を支援する重要な役割を果たしている。
日本市場での欧州企業の貿易取引の促進及びビジネス環境の改善を目的に掲げ、日本とEU間の経済交流事業を行っています。具体的には、駐日欧州連合代表部、加盟国大使館、その他の駐日の欧州経済団体と緊密な連携を図りつつ、日本における欧州企業のビジネス環境改善のために、協会報告書及び提言書を発行するとともに、日本政府への貿易、投資の環境に対する政策提言及び提案を行っています。またEBCは、欧州委員会及びEU加盟国に対し、日本のビジネス環境についての情報提供を行い、日本においては、プレゼンテーション、セミナー、マス・メディアを通じて、欧州企業およびEBCの広報や日本政府の委員会への参加や政府のパブリック・コメント等を活用した意見具申等を行っています。日欧ビジネスダイアログ・ラウンドテーブル、日欧サミット、日欧二極間規制緩和対話等の会議でEBCから提案を行うとともに、日本の政府機関からの要請を受け、EU代表部や欧州委員会へ意見や要望などを伝え、関係是正に向けての提案等を行っています。
EBCには、自動車や医療機器だけではなく、労務や税制やサステナビリティなどの委員会があります。各委員会はEBCの会員企業で構成され、委員会では、日本市場でのビジネス動向や昨今の米国の貿易経済施策等、幅広い議論が行われ、同じ産業分野の会員企業の交流促進に繋がる側面もあります。
EBCは各国商工会議所とは異なり、企業間の問題解決ではなく、企業と行政の間に立って欧州企業の要望などを伝える役割を担い、定期的に日本の政府機関、経済産業省、国土交通省、厚生労働省、国会議員等と意見交換を行っています。地方自治体からの来訪や問い合わせも多く、自治体主催のセミナーや交流会等を通じ、地域に立地する欧州企業との交流や情報共有も行っています。
ミプロが提唱している、「対日アクセス支援」の延長線上に「対日投資支援」があるというメッセージは、対日投資支援に対する考え方として、我々も大いに共感します。EBCは、日本市場へのアクセスを促進している中で、日本でビジネスを開始し、日本に拠点を構える欧州企業に対し、様々な支援や情報提供を行ってきました。「貿易」と「投資」は一緒に考えるべきであり、投資のみの政策ではなく、貿易関連の施策として「通商政策」を適切に行うことで、投資が増加するのではないかと考えています。EBCとしては、欧州企業側の要望を取り纏めて、日本の政府機関に提案していますが、「投資」だけではなく、「貿易」についても同時に協議します。例えば、基準認証における相互認証制度の実施などの議論を通じて、「貿易」が行いやすい環境が整えば、「投資」も促進されると考えています。
日本への輸入に際しては、欧州の輸出者には理解しづらい規制などもあるため、ミプロが作成している製品輸入や外国人起業家向けの資料は非常に参考になり、在日外国企業の日本市場参入に大きく貢献すると考えています。逆に、可能であれば日本の事業者に欧州の基準を理解して頂く機会を提供することで、欧州製品の輸入をより促進したいと考えます。
各国にあるEBCは、現地の政府機関に対して、市場参入の障壁の是正を要望する等のロビー活動を行っています。しかし日本では、日本から撤退せず長期的に投資を行う欧州企業が多く存在することから、現在の日本市場に対して欧州企業は概ね満足感を持っていると言えます。特に、日本政府の政策が安定的であり、市場環境や規制等の変化が激しくない点が、欧州企業から高く評価されており、知的財産権に関するトラブルが少ないことも大きな利点とされています。また、日本市場では、高品質製品を相応の高い対価を払って購入する消費者層が多いと感じます。例えば、30~40年前には、欧州で製造されている商品が日本市場のニーズと合わず、購入に結び付かないケースもありましたが、今は直輸入品のニーズも高く、また日本企業が欧州で製造して逆輸入している場合もあり、「海外で作られているから」、「外資系企業だから」などと意識することはかなり減ったように思います。
一方で、現在、欧州企業が日本に投資する際の最も大きな障壁は「労働力不足」であり、特に、マネジメントレベルの人材不足が顕著です。日本拠点開設にあたっては、欧州本社の経営陣との良好な意思疎通が必須ですが、そのような人材を見つけるのが難しいと感じます。特に製造業分野への投資の場合、技術者や特定分野の専門家に英語が堪能な人材が少なく、本部や海外拠点とのコミュニケーションが難しいという声も聞きます。もちろん企業側でも、採用した社員に対して職務上必要な英語教育は行いますが、基本的に適切な人材が少なく、地域の外国人雇用の情報もほとんどないのが現状です。他方、ある自治体の企業立地課の方からは、大学との連携によるスタートアップ企業の立地環境の説明を受けましたが、外国人や外国企業も利用できる制度であることを知り、それが強く印象に残っています。自治体の制度や取り組み、地域の産業やビジネスなど詳しく知ることができると、日本のローカル市場の理解も深まります。今後も自治体の方々とは、積極的に交流を行いたいと考えます。
EBCは、自治体の方とは積極的に交流を行っていますが、民間組織とは異なり、あくまでも政策的な見地からの意見交換となります。ただし、自治体や地域の経済団体の方から、欧州への輸出や投資に関連した、EU規制や法律などを聞きたいという希望があれば、可能な範囲内での情報提供や支援機関などの紹介をしています。そのため、自治体の皆様にお声がけいただき、セミナーや交流会などに参加させて頂くことも多く、欧州企業への情報提供等も協力しています。
EBCでは、ニューズレターを発行しており、自治体主催の投資セミナーなどのお知らせ等も、必要に応じて掲載し、会員企業の他、政府関係者、他の自治体などに送付しています。EBCとしては、ビジネスに直接関係する情報提供は行っていませんが、例えば、欧州の域内規制については、一般的な情報提供が可能な場合もあります。他にも、もし個別具体的に相談したいことがあれば、会員企業である弁護士等の専門家をご紹介することができます。
地域への投資については、外国企業の立場からすると、「どこが特別か」「どこがセールスポイントか」を明確にした方が分かりやすいと考えます。自治体の皆様へのお願いとして、実際に立地している外資系企業の取り組みなども、是非紹介して頂きたいと思っています。日本の地域のイメージとして、「観光地」や「神社仏閣等の歴史的建造物」などはなじみがありますが、地方の産業や企業についてはあまり情報がないため、外資系企業にとっては、その地域で既に投資している企業の活動や地域の産業集積などの情報を知ることで、地域への投資のモチベーションが高まる可能性もあります。ある自治体の対日投資セミナーでは、投資誘致担当課の皆様が明るく元気に接して頂き、交流会ではトップが自らご挨拶に歩かれ、最後は職員全員で見送りをして頂いたことに大変感動しました。誘致に携わる「人」は、本当に大事だと感じ、その自治体の印象は今も強く残っています。
チーフポリシーディレクターをリーダーとして、同所職員が対応している。E-mail等で日本語での対応も可能。
なお、日本の輸出事業者への情報提供は基本行っていないが、炭素国境調整メカニズム(CBAM)* の対象物品等に関する情報提供は一部行っている。
※CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism)とは、EU排出量取引制度(EU ETS)に基づいてEU域内で生産される対象製品に課される炭素価格に対応した価格を域外から輸入される対象製品に課す制度。
欧州ビジネス協会(EBC)
〒105-6415 東京都港区虎ノ門1-17-1
虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階
電話: 03-6807-5932
https://ebc-jp.com/ja/
以 上
2025年8月